こうちゃんの言葉がどうしても胸に引っかかる。

 何で二人で水族館?桃とか中川先輩を誘わないのかな…?
 4人で行ったら楽しいのにな。きっと。


 試合開始5分前。
 こうちゃんと新城高校の人は向かい合って立つ。

 睨み合う二チーム。新城高校のエースはこうちゃんを、
見ながら笑う。

 そして、何やらこうちゃんに
 呟いていた。こうちゃんは
 それを聞いて、掴み掛かろうとした。
  
 だけど、中川先輩が左腕を出してこうちゃんを止めていた。
 こうちゃんは我に返って集中モードに入った。

 試合開始の挨拶。二チームは挨拶をし、自分たちの位置に着く。
 ボールが高く飛んだ。

 試合開始だ。 ピーー!
 こうちゃんは中川先輩が当てたボールを拾い、ゴールへ向かう。


 シュンッ ボールを投げたこうちゃん。

 だけど、すぐさまそのボールは
 新城高校のエースに捕られる。


「だから、おめーはおせーんだよ!」


 新城高校エース、谷口が
 そう叫ぶとこうちゃんは
 急いでボールを取りに行く。

 だが、谷口はこうちゃんを
 かわしてそこから、仲間にパスをする。

 その連携プレーは、すごかった。
 バスケの分からない私でも、
 その連携プレーは早いと感じた。

 目で追いつけないほど素早いパス。

 

 そして、ゴールが決まる。


 ピーー!

 ベルが鳴り響き、相手校に点数が
 加算された。最初からこんなプレーを
 見させられて本当に勝てるのか
 不安にならないのかな…。


 そんな私の考えは一瞬で消された。
 こうちゃん達は素早く
 試合を始め、ボールをパスし合う。
 中川先輩がボールをドリブルする姿。
 私は不思議とこうちゃんではなく、
 中川先輩を見つめていた。   

 そして、中川先輩は
 新城高校の人達をかわしながらゴールへ向かう。
 ゴールを決めようとする。
 谷口はそれを止めようとしたが
 中川先輩は後ろにボールを投げた。


「何!?」


 中川先輩が投げたボールの先にはこうちゃん。
 こうちゃんはニヤリと笑って、ダンクシュートを決めた。
 バンバーン。ボールが地面に転がる。

 ピーー!こうちゃん達に点数が加算された。
 今…何が起きたの?観客席がざわつく。


「今のノールックパスだよな…」

「俺初めて見たよ」


 観客席の人達が次々と、ノールックパスの言葉を口にする。



「へぇー。ノールックパスできるように、なったんだな。海斗」


 谷口が中川先輩にそう言う。無言の中川先輩。
 こうちゃんは谷口に近付いて大きな声で言った。


「俺は今おまえ等に宣戦布告をする!おまえ等新城高校にぜってー勝つ!」


 会場が一気に盛り上がる。