海斗が優愛にまさか
 あんな事を言うなんて思っても見なかった。

「俺は柳原可愛いと思うけどな」

 一瞬胸騒ぎがしたんだ。優愛を見ると
 優愛が頬をピンク色に染めていたからだ。

 優愛が“とられる”その時の俺はそう思った。
 だけど、海斗が俺の言葉に返答しなかったから
 好きじゃないんだなって思った。

 ほっとした。でも実際あいつが何を
 考えてるかなんて分かりもしない。
 だから余計怖かった。優愛とあいつを会わせるのが。

 海斗と俺は長い付き合いだ。あいつは女に告白されても
 全部断っていたし、無視をしてた。

 俺は逆に優愛を好きだと言いながらも
 告白されて喜んでいたし、
 断っていたけど今も女とメールする事もある。

 俺とあいつの違いは好きな女だけっていう
 考えが俺は甘いって事だけなんだ。
 俺はふざけすぎた。だからあいつに先越されたのかな。

 部活の途中、優愛が怪我して
 俺が一番最初に優愛に駆け寄るって
 思ってた。だけど、一番最初に
 駆け寄ったのは俺じゃなく海斗だった。

 何でだ?海斗。俺が好きなの知っててそんな行動してんのか?

 海斗が、優愛を抱きかかえて
 体育館を出るのを黙って見ていた俺。
 無償にも悔しくて、悲しかった。
 追い掛けなかった理由は優愛がまた、顔を赤くして
 嬉しそうな表情をしていたからだ。
 追いかけたくても追いかけられなかった。

 あんな顔されたらどんなに、惚れてても悔しいだけなんだよな。


「いいの?とられちゃうんじゃない?」


 バレー部の部長、川瀬に言われ
 我に帰って後を追いかけた。
 息を切らして保健室に着くと中から二人の声がした。

 途切れ途切れの優愛の声。ふと、覗くと照れる海斗が見えた。
 そして、言葉より先に体が動いた。
 優愛の足に巻かれた不器用な包帯。海斗が手当てしたのか。


「俺が送る」


 子どもみたいな事を言って優愛を困らせた。
 ごめん、優愛。俺…本気なんだ。海斗に、とられたくない。

 優愛の家に行くと兄貴たちに捕まって車に乗る俺。


「はぁっ!?まだ告ってねーのか、お前」


 はぁ、ため息しか出てこない。


「まぁ…あいつは鈍感の上に馬鹿だからなぁ」

 
 数時間走った後夜優愛に電話した。
 優愛は電話にでて眠そうな声をしていた。
 試合に、応援に来てくれと言って電話を切る俺。
 もう少し話していたかったけど
 俺は、もう優愛に悲しい思いはさせたくねー。

 明日からは馬鹿やらねぇ。海斗より先に優愛に告白する。
 俺はその日の夜覚悟を決めた。