帰り道。

 あのあと、部長に頼んで
 早めに上がりにしてもらった。だけど、まさか
 こうちゃんまで上がるなんて思ってもいなかった。


「こうちゃん…」


「ん?何?」


 呟く私をおんぶするこうちゃんが
 無理しながらも私の方を見た。


「こうちゃんまで帰らなくてもよかったのに…今週の土曜日試合でしょ?ばかじゃん」


 しゅんとする私。でもこうちゃんは笑った。


「俺がいいって言ったらいいの!てか、お前重すぎっ」


「こうちゃん酷い!!もういいもん、下ろして!」 


 ブスッと膨れる私。爆笑するこうちゃんが悪い悪いと
 謝りながらそのまま歩いた。

 この道を二人で歩くのは久しぶりだなぁ。いつも桃が緒にいるから、
 二人の時は滅多にない。

 夕日が沈み暗くなった頃、私とこうちゃんは私の家に着いた。 
 お母さんとお父さんには
 心配されたが、私の上の兄貴たちに
 爆笑されてものすごく恥ずかしかった。

 こうちゃんは兄貴たちと
 そのあとどこかに連れてかれ
 帰ってきたのが10時ぐらいだった。

 その日の夜こうちゃんは
 夜遅いので私の両親に
 泊まっていきなさいと言われ泊まっていた。

 一家団欒仲良くこうちゃんを含め、
 お母さんの手料理が披露された。
 いつもはお母さんではなく、
 お父さんが料理をしているのが私達家族。

 その訳はお母さんの料理が激マズだからだ。
 ちゃんと食べないとお母さんが悲しむから
 残さず食べるがお代わりする人など決していなかった。

 逆にお腹を壊すのでみんなは胃薬を手に持って
 お母さんの料理を食べるのだ。


 そんなこんなで家が静まった頃、こうちゃんから
 電話がきた。どうして今同じ屋根の下にいるのに電話?

 不思議に思いながらも電話にでるためにベランダへ出た。


「何?どうしたの?お腹でも壊したの?」


 くすくす笑いながら私が言うと
 いつもと増して真剣な声で
 私に、こうちゃんはこう言ってきた。


「今週の土曜日の試合、絶対勝つから応援に来てくれないか?」

「えっいいけど…どうして直じゃなくて電話?」


 私はこうちゃんの考えている事が分からなかった。今日の学校から
 こうちゃんなんだか変。


「なんとなく。絶対応援してくれよ、おやすみ優愛」 


 こうちゃんはそう言うと電話を切った。
 どうしたのかな、急に…。
 あ、そういえば中川先輩が私と関わったときからだ。


 まさか…こうちゃん。


 まさかね、違う違う。そんなわけないない。
 そう自分に言い聞かし
 部屋に戻ると私は眠りに入った。


 その日の夜夢で中川先輩とこうちゃんが喧嘩した夢を見た。
 嫌な夢だった。


 その夢がまさか、本当に起きるなんて
 思っても見なかった。