数分後。


「全員集合!」


 こうちゃんが大きな声で部員を集める。


「今週の土曜日、俺らが闘う新城一高校だが。あいつらは俺らの高校を嘗めてやがる!絶対勝つぞ!」


「おぉー!」


 こうちゃん達は今週の土曜日、バスケの試合がある。
 相手校は新城一高校。
 県内では1位2位を争う強い高校だ。


 そんな私たちは前に何度も負けていた。
 相手校も私たちを見て負け犬と呼んでいる。

 今年こそは、勝つ!
 こうちゃんの言葉の意味には
 今年の夏でこうちゃん達は引退するからだ。

 まぁ…私にはさっぱり
 バスケの事なんて知識はないけど
 頑張って欲しいと思う。
 バスケ部は熱心に部活を始めた。
 さっきとは全く違うこうちゃんの表情。


 キュッキュッ
 シューズと床が擦れる音。

 バンバンッ
 ボールが床に当たる音。

 ダダダダダダダッ
 走る部員メンバー。


「海斗先輩パス!」 


「…。」


 ボールを受け取る中川先輩。


「海斗負けねーぞ!」


 前にでるこうちゃん。


「…本気出す」


 ダダダダダダダッ
 こうちゃんを抜ける中川先輩。


「あっおい!」


 追いかけるこうちゃん。
 部員をかわしながら走る中川先輩は
 速くすごかった。

 シュッ  ザッ
 中川先輩が投げたボールが入った。

 ワーーー!周りがざわつく。


「おめー、まぢでやったろ!」


 笑うこうちゃんの前で
 ユニフォームの裾で汗を拭く中川先輩。


「本気…出すって言ったろ。」


「生意気言いやがってこいつぅー!」 


 じゃれ合う2人。その姿を見つめる私。


「…優愛ちゃん!ボールいったよ!」


 部長の声に慌てて反応する私。


「あっ…はい!」


 バキッ
 足でボールを受けてしまった。


「痛…」


 思わず足を抱えてしゃがむ私。
 部員メンバーが私に、駆け寄る。


「優愛ちゃん!大丈夫!?」


 ざわッ
 こうちゃんと中川先輩がバレー部を見る。


「バレーボールを足で受けたらしいっすよ」

「はぁっ!?あいつ馬鹿だろ…」


 こうちゃんが走ろうとした時、
 こうちゃんより先に中川先輩が走った。


「…え?中川先輩…?」 


 私の前にしゃがむ中川先輩は私の足を見て、


「立てるか?」


 私の目を見て言ってきた。


「大丈夫ですよ♪練習に戻ってください」


 笑顔で笑う私。すると、


「その足じゃ、まともに歩けねーな。」


「えっ?」


 ぐっ
 私を軽々と持ち上げ抱きかかえる
 中川先輩に驚いた。
 周りがそれを見つめる。
 こうちゃんも見ていた。


「あのっ…私本当に大丈夫なんで…下ろしてください」


「今手離したら落ちる…黙ってろ。」


 なに…なんなの、この展開…。