今回は重ねるだけのキスだった。


だけど、涙が出てきた。


それに気づき、藤堂さんは唇を離して、机から私を下ろす。


「泣くな」


珍しく、心底困ったような声色だった。


「ふ、ファースト……キス……す、好きな人って、決めてたのに……あんなことしておいて、ま、またするなんて……ひ、ひど」


怒りたくても、悲しみの方が強いうえ、涙が止まらなくて、声が出せない。


「だったら、俺に惚れろ」


いつもの調子で、彼は冷静に言い放った。


こっちは涙は止まらず、ついには嗚咽まで出てるのに……。


「ほ、本気でない、泣いてる、んで……すけど……!」


「こっちも本気で言ったんですけど。ってか、前の男としなかったのか?」