摩天楼Devil

あのアパートと変わらない。


場所が変わっただけ。

二人きりなんて、初めてじゃない。


と、繰り返し、心の中で呟いた。


「妃奈。熱は?」


玄関で、彼がおでこを合わせてきた。


何度もキスしたのに、接近する顔に、ドキドキした。


「……ある?」


「ち、違う。あ、篤志さんが近いから!」

と思わず、本音を言って、後方に逃げた。


篤志さんは、クスリ、と笑った。


「お風呂沸かすから、お入り。俺はリビングで待ってる」


結局、用意されたお風呂に入る覚悟を決めたが、渡された着替えに、再び緊張が走る。


「女の子の服なんてないから、我慢して」


と、渡された白いバスローブ。


はい、と返事をしながら、目を合わせられなかった。


浴室に入ると、ギュッとバスローブを抱き締めた。


それから、車内でママと携帯で話したことを思い浮かべた。


『ご迷惑がかからないようにね。それと、ちゃんと勉強しなさいよ!』


篤志さんのお陰で、赤点は逃れた期末テストだったが、ギリギリの60点だった。


怒らなかったが、ママは満足してなかった。

勉強するための宿泊、と知って、逆に安堵したかもしれない。