お兄さんに外されたボタンを閉じながら、恐怖と悲しみの中にいた。


指の震えは治まらなかった。


――本当にダメかと思った……


同時に疑問。


彼は本当に私を襲う気があったんだろうか?

確かに、篤志さんがいる、と騙し、寝室に入らされ、ベッドに倒されたんだけど……


ブラウスを半分脱がされ、完全にパニックになってた私を尻目に、彼は寝室を出で、スーツからあの格好になった。



制服を直すと、床に落ちてたカバンを拾った。


コンコン、とノックがして、返事をすると、好きな人が入ってきた。


そう、好きな人……


会いたかった。


危ないと分かってて、付いてきた。


会えると思って。


もし嘘でも、どうせ好きな人に嫌われているなら、と半分ヤケになってた。


気持ちのない人に触れられても、抱かれても、不幸になるだけなのに――


「妃奈。動ける?」


私は首を横に振った。

せめて、少しでも多く、傍にいたかったから。