たとえ、失恋しちゃうとしても、どのみち会えなくなっちゃうなら――


「顔見たかった……」


不意に思い出した彼の顔は、あの寂しそうな表情だった。


父と交されたという誓約。

お兄さんとの関係に、跡取り問題――


『そんな風に見えるのか。なら、よかった。周囲にも舐められずに済むな』


『御曹司って言葉は、俺じゃなく、兄貴に使うんだ』


「何?……なんか、今までの篤志さんの言動って……」


明らかに、自分に自信がないような……


いや、そんなレベルじゃないかもしれない。

篤志さん、何があったの?


私は新聞を閉じ、ママのいるキッチンに戻った。


「ねぇ、神崎社長って、藤堂雅彦さんのイトコって……」


「ええ、そうよ。だから、跡取りにできるんでしょ?
少しでも、血が繋がってる方がよかったんでしょうね。なら、わざわざ養子にしなくたって……」


そこまで、ニュースや新聞を見てなかった。


「養子?」