叔父さんの姿が見えなかったが、玄関から洋間までの廊下の途中、会話が聞こえてきた。


「すまない。俺がああ言ったから……」


「いえ、感謝してます。それに、あのままじゃ、大切な姪御さんが傷ついてましたよ」


「俺が行くべきだったんだ。……いや、行かなかったな

……まさか、遼君がそんな……妃奈を車に乗せたのは、ただ送ってくれるんだと思ってた」


感謝してる。ありがとう、と叔父さんは続けた。


「仕方ない。兄さんは外面だけはいいからね」


なんでも、叔父さんは私とお兄さんが一緒にいるとこを見かけたのを、別に何とも思わず、篤志さんに告げたらしい。


「……じゃあ、ゆっくり寝てくれ。じゃ」


叔父さんが来ると思い、何となく玄関まで戻って、たった今帰ってきたように演じた。


「あ、叔父さん。薬と体温計預かってきた」


「そうか……」


彼は頷き、入れ替わりに出ていった。


洋間に行くと、彼はまだベッドに座ってるだけだった。