そうこうしていると、始業を知らせる音楽がなり、同時に人事部長が何人かを引き連れて部屋に入ってきて朝礼が始まった


そして今、私の目はある一点に釘付けになっていた…


何かの間違いだよね
うん、絶対そう!
こんなことあり得ないし…

1人ブツブツ、頭を振っている私を隣で不思議そうにチラ見しているアコちゃんを気にする余裕は全くなく、私の頭は夕べのことがグルグルめぐっていた

そして、ひとつひとつ思い出すたび、違っていてほしい私の願いは確信に変わっていった…

それに、長身で艶やかな黒髪に漆黒の瞳、仕立ての良いスーツを身に纏ったあんなイケメン、見間違えるはずもない

ハァ~
頭に辞書50冊ぐらい乗っけられたように重いし、痛い…

「えー、29歳という若さで、実績が認められ会長たっての希望で営業部長に抜擢された
神鬼透魔(カミキトウマ)くんだ」

人事部長が紹介を終えると、
『只今佐藤部長からご紹介いただきました…』って自己紹介を始め、項垂れている私の近くの三十路コンビが

「カミキ部長って次期社長とか言われてるらしいよ~」
「海外の本社から引っ張ってこられたとかさ、何ヵ国語か話せるとか~」
「超イケメンで、超エリートって凄くない!?」

相変わらずどこから仕入れてくるのか、小声で盛り上がっている
ツッコミ所満載だけど、今はそれどころではない


ヤバい!
超ヤバい!!
夕べ、あーんなことや、こーんなこと…
醜態をさらしまくった相手が、よりによって上司になる人だったとは!