花火大会に行きたい。




そう、彼女が言った。





久々にデートと称して買い物に付き合わされ、生パスタがオススメのコジャレたレストランで、しぃちゃんはぼんやりと窓の外を見ていた。

全国規模とまでは言わないが、地元ではわりかし有名な花火大会が、近く催される。

しかし、残念ながら。


「あー、……その日、俺、仕事なんだ」


申し訳ない気持ちで言うと、しぃちゃんは窓からこちらに視線を戻し、パチリと瞬きひとつ。


「知ってる。お兄ちゃんから聞いてるし」
「ゴメン」
「別に。堀くんと一緒じゃないと行けないわけじゃないもん」
「……ですね」


シレ、と言われ、心で泣く。
つれない。
こういうヤツだよね。
ホント、素直すぎる。


「でも」


しぃちゃんはまた窓の外を見た。


「カップルばっかりだろうから、堀くんのこと、思い出しちゃうかな」


一応、恋人同士だし。


そう言って、フッと口元を緩めた。


好きだと言われたわけではないのに、
寂しいと言われたわけではないのに、
その素直過ぎる言葉ひとつに、俺の心臓はギュッと鷲掴みされてしまうのだ。


「今週末に、花火買って海行こうぜ」
「ショボいからそれは嫌」



*****

201503

昔描いたやつ。
ちょっとだけ手直し。
ツンデレ彼女いいよね。
尻に敷かれる彼氏いいよね。
不器用な彼氏と思いきや、彼女の方が愛情を伝えるのは苦手なんだよ萌えるよね。