プロフィールシートには、


 エステ経営。

 年齢36歳。
 一番大事な年収は書かれていない。
 夏川絵美。
 身長164センチ。
 住所 芦屋市。
 ひとり暮らし。
 1回の離婚歴。
 短大卒。


 純一はプロフィールシートの交換の時、わざと手を握るようにした。
 絵美の手は、エステを経営する者にふさわしい優雅な手だった。
 純一はその手を見て、エステ経営が成功していると直感した。

 「エステを経営されているのですか」
 「まあ」

 「たいしたもんですね」
 「たいしたことありまへん」

 「ええ」

 上から下まで、シャナルで決めているゴージャスな女の口から、似つかわしくない関西弁が・・・。

 「何店経営されているのですか」
 「北、南、神戸、京都の4店でんな」

 「へえ、4店もですか」
 「それなら年収は億ですね」

 「半分も稼いでまへんわ。変なこと聞かんとって。それより、あんた独身か?」
 「独身です」

 「結婚はしたことはないんか」
 「ええ」

 「なんでや」
 「たまたま縁が無かったもので」

 そう言って、芳恵と同じ答え方をしている自分が、純一は可笑しかった。