甘恋集め

としくんと二人、電車に揺られながら流れる景色を見ているけれど、私の中にその絵は全く入ってこないくらいに気持ちはいっぱいいっぱいだった。

両親が亡くなって以来、私の面倒をみてくれた高橋のおじさんとおばさん。

その二人が望んだとしくんとの結婚を断ることは、二人の愛情を裏切るような気がしてつらい。

私が幸せになるよう心を砕いてくれた二人の恩を仇で返すように思ってしまう。

どうやって私の気持ちを伝えればいいのか、傷つけずに済むのか、考え出すと落ち込むばかり。

でもわかってる。二人を悲しませずに気持ちを伝える方法なんてないにとわかってるから、つらいんだ。

「美乃一人の問題じゃないし、男の俺がちゃんと言うからそんなに緊張するな。
ちゃんと話せばわかってくれる」

扉にもたれながら、私を安心させるような笑顔。

「ううん。結局は私がはっきりしなかったせい。高橋のおじさんに気をつかいすぎて、結局本当に大切にしなきゃいけなかった人達の気持ちを後回しにしたから。……としくんと、結花まで巻き込んでしまって、ごめんね」

俯く私。もっと早く自分の気持ちに素直に動いていれば、としくんだって。

「いいんだよ。自分の結婚のことなのに、他人事のように放っておいた俺のせいでもあるし。第一、美乃と駆には解決しなきゃならない問題があっただろ?」

「あ、うん」

「で、その問題は解決できたのか?」

心配そうな声で尋ねるとしくんは、今日一番の真剣な表情を私に向けた。
覗き込むように私に視線を投げる姿に、私の気持ちは一層重くなる。

「解決したっていうか……駆のご両親は泣いてた」

「泣いて……?」

「うん。私と駆の結婚を最後まで反対してたけど、結局は泣いて泣いて。
で、感謝された。申し訳ないって」