利也さんの部屋に入った途端、奥からバタバタと出てきたのは美乃ちゃんだった。
不安そうな顔で駆け寄ってきたけれど、利也さんに肩を抱かれている私を見た瞬間にぱっと表情が明るく弾けた。
「確保完了だね」
まるで飛び上がるみたいに喜んで、私に抱きついてくる美乃ちゃんに驚いた。
どうなってるのかわからなくて、隣の利也さんを見ると、苦笑しながらも嬉しそうな瞳で私たちを見つめていた。
「み、美乃ちゃん?どうしたの?え?」
戸惑う私なんてお構いなしにぎゅうっと抱きついたままの美乃ちゃんは、私の首筋に口元を寄せて、小さく呟いた。
「遅くなって、待たせてごめんね。結花の気持ち、知ってたのに何してもあげられなくって……ごめんね」
首筋に感じる冷たさは、涙?
小さく震える美乃ちゃんの背中に気付いて、私の中に痛みが走った。
「美乃ちゃん……」
「ごめん、ごめん」
何度もそう言って、涙を流している美乃ちゃんはいつもより小さく見える。
普段はいつも強気な部分しか見せていなくて、誰にも弱みなんか出さないのに、こうして私に抱きついたまま泣いている美乃ちゃんが切ない。
これまで、どれだけ悩んできたのかと、一緒に泣きそうになる。

