甘恋集め

「それだけって……私がどれだけ悲しかったか……」

些細な出来事を話すように、軽く話す利也さん。

そんな彼に腹が立って、思わずその胸を叩いてしまう。

両手で何度も叩いて、その目を睨んでも、利也さんはただ受け止めて笑い流してるだけだ。

本当に、余裕ばかりを見せられて私の怒りはおさまらない。

「悪かった。これから見つめるのは結花だけだから。美乃の事、気にするな。
他の女の事も気にする事ない。今ではもう、結花だけの綺麗な俺だから」

ふふん、と最後に笑うのは余分だけど。

利也さんの言葉が次第に私を溶かしていく。

そして、ほんの少しの時間一緒にいるだけなのに、既に私の気持ち全ては彼のものになってしまった。

「一番端の部屋だから」

そうなんだ、と思った瞬間、ぐいっと抱き寄せられた体は利也さんの正面を向いて、あっという間に唇が重なった。

「こんなところで……」

もうすぐ部屋なのに、人に見られたらどうするの……。

キスの合間にそう呟く私の声にかぶせるように何度もキスが落とされる。
足元から力が抜けていって、立っていられなくなる。
利也さんの背中に腕を回して縋りつくと、更に強い力で抱き寄せられた。

そして、そっと囁かれた。

「部屋で美乃が待ってるんだ。あいつらの前でキスなんてできないだろ?だからここでしとく。あ、逃げるな。もう少し」

後頭部を押さえられて、私の顔を強く固定して、奪うように深いキスをする利也さんは、それまでとは違って、何だか余裕がなかった。

そして、その事が少し嬉しくて、つたないながらも、キスを返した。