甘恋集め

それから、利也さんが車を停めたのは、高層マンションの地下駐車場。

軽く見ただけだけど、見上げると首が痛くなるくらいの高さだった。

「ここって?」

「俺の家。20階なんだけど、高所恐怖症じゃないよな?」

からかうように笑いながら車を降りて、それが当たり前のように私の肩を抱く。

さっき、私を迎えに来てくれてから今までの利也さんの様子って、女の人に慣れてる人って感じがする。

そりゃ、こんなに格好いいんだから、今まで女の人と何もなかったなんて思わないけど。

キス、上手だった。そんな事、知りたくなかったような、でも恋人だったら、もっとキスしたいって思ったりもするし。

「何?妙な顔してるけど」

私の顔をのぞきこむ顔さえ整っている。

これまでだって、私以外の女の人にそんな顔、見せたんだろうなと思うと素直になれない。

たとえ美乃ちゃんであっても、同じ。

「妙な顔は、うまれつきです。利也さんみたいに素敵な顔ならこんなに悩んでません」

思わず、言ってしまった。

利也さんへの片想いに苦しんでいる時には、ただつらくて悲しかった。

美乃ちゃんの婚約者だから、思いが届くことはないし、隣で笑う事もできないって諦めていた。

せめて、私の気持ちを伝える事ができればいいのにって思ってた。

受け入れてもらえないってわかってたから、ただ伝える事ができれば諦められるのかなと、それだけを願ってたのに。

「好きって伝えるだけじゃ、足りない」