突然すぎる言葉に、どう言葉を返していいのかわからないままの私の額に、掠めるようなキスを一つ。
利也さんは体を起こして運転席に戻った。
今まで近くにあった利也さんの重みが消えて、自分が不安定に感じた。
「俺の姉って、KH建設の高橋専務の嫁なんだ」
「は?高橋専務?」
「そう、で、美乃は高橋専務のお父さん、つまりKH建設の社長の親友夫婦の子供なんだ」
「……」
一体、利也さんってどういう人なんだろう。
高橋専務の奥さんの……弟?
で、美乃ちゃんは、社長の子供、じゃない、親友の子供?
利也さんはともかく、美乃ちゃんからそんなの聞いた事もない。
社長と知り合いだから秘書課にいるのかな、でも、社長の事、特に気にしている様子でもないし。
「巧さん……あ、高橋専務は、俺にKH建設に来いってうるさいし、社長さんは美乃の将来を気にしていて、あ、美乃の両親は亡くなっていて、あいつは天涯孤独なんだ。だから俺と結婚させようって安易な事を思いつくし、ここ何年かは、俺も美乃もうんざりしてたんだ」
「でも……婚約してた」
気になった事、小さい声で聞くと。
「ああ。美乃の事、嫌いじゃなかったし、他に好きな女もいなかったからな。
ま、いっかって思って。多分美乃も同じ。自分を引き取ってくれた社長への遠慮もあって、流されるように婚約したんだと思う」
「そんな……」

