近くの駐車場に停めてあった利也さんの車に乗せられた。
利也さんが、当たり前のように助手席のドアを開けてくれた時、また泣きそうになった。
ぎこちなく乗り込んで、シートベルトを着けた時、運転席から体を寄せてきた利也さんの唇が落ちてきた。
さっき触れ合った時よりも深いキス。
助手席の背に両手を置いて、私を囲うような態勢でのキスに、身動きもとれないし息も上手にできない。
利也さんが唇の角度を変える一瞬に、大きく息を吸い込んだ。
ホッとしたのも束の間、小さく開いた私の唇の間から利也さんの舌が差し入れられた。
「はっ……と……しや……さん、あ、あの……」
私の舌にからませて、利也さんは思うがままに深いキスを繰り返す。
利也さんに押し付けられた私の体はどんどん熱くなって、自分の体じゃないみたいだ。
まるで溶けていくみたいに力が抜けていく。
「ずっと、こうしたかったんだ」
利也さんは、そっと唇を解放して、額と額をくっつけて、大きく息を吐いた。
「初めて店に来た時から、こうしたかった」
「え?うそ……」
「嘘じゃない。この唇の温かさを俺だけのものにしたくてたまらなかった」
低い声は震えていて、その瞳は暗い。
「どれだけ我慢したか……」
「でも、でも……全然そんなのわかんなかったし……それに、美乃ちゃんと結婚するって……」
「俺も美乃も、周りに勧められて、諦めてたんだよ。
お互い嫌いじゃないから、まあいいかって、妥協してたんだ」
その言葉を私がどう受け止めるのかを窺うように、利也さんは不安げに顔をしかめた。

