甘恋集め

盛り上がるコンパの雰囲気を壊さないように、口元に笑顔を浮かべていても、気持ちはどこか乗り切れない。

「結花さんって、お酒強いんだね。さっきからワインやビール、かなり空けてるよ」

向かいの席の男性に声をかけられて、どうにか意識を取り戻す。

「ワインが好きなら、この近所に種類が豊富なワインバーがあるから、この後行かない?」

「あ、ワインはそんなに好きでもないっていうか……」

爽やかな雰囲気の人だな。あからさまに私を誘ってくれてるけど、何だか警戒心を持たなくても大丈夫に思える。

私を見つめる優しい表情に、少し気持ちは軽くなる。

「ワイン以外にも珍しいビールも置いてあるから、行ってみようよ。
おいしいチーズもあるし」

押しの強い言葉で誘われて、一瞬迷ってしまう。

コンパに来たのは、こうして男性に誘ってもらうのが目的なんだから、将来性十分、見た目も優しそうな人、ついて行くのが当たり前なんだろうと、思う。

でも、心はそれを拒否してしまう。

私がついていきたいのは、この人じゃないと、叫んでる。

本当に側にいて欲しい人はこの人じゃない。

今日この場にいる人達じゃ、ないんだ。