淡々と仕事だけに気持ちを傾ける日々。
入社して以来、明るく積極的な、そして男らしい美乃ちゃんに比べ、静かな印象を人に与えがちな私だったから、一生懸命仕事に打ち込んでいても何もおかしくなかった。
一人暮らしで恋人もいないとなれば、残業を頼まれる事も多い。
忙しさで仕事を処理できない先輩のヘルプに駆り出される事だって当たり前。
ただ、ここ最近の私の仕事への集中力は半端なものではなくて、美乃ちゃんがおかしく思うには十分だった。
食事に誘われても残業を言い訳に断り続ける私に違和感を感じた彼女は
「今日こそ飲みに行こうよ。そのデータの入力だって急ぎじゃないでしょ?明日に回しても影響なし。今日はおごるから飲みに行くよ」
我慢しきれなくなったのか、終業後、私の席の側で、顔を真っ赤にしてる美乃ちゃん。
彼女がこんな風に怒ったら手がつけられない。
いつもなら、諦めて彼女の気持ちに沿うように努力するんだけど。
「でも、きりがいいところまで終わらせたいから、ごめん。また今度飲みに行こう」
「えー、一体どうしたのよ。そんなに仕事ばっかりして、顔色も悪いし。
最近寝てる?ご飯もちゃんと食べてる?体重、減ったでしょ」
ちょっと、どきっとした。
確かに最近眠れないし、食欲もない。
だからなのか、眩暈を感じる時もあるけれど、大した事ない。
私の気持ちが落ち着けば、全て改善されるはず。
利也くんの事を完全に忘れられれば、体調だって戻るに違いない。

