甘恋集め


「じゃ、システム開発に届けてくるから。会議室の準備をお願いしていいかな」

週明け、書類を届けて欲しいという電話があって、急いで持って行こうとした時、近くにいた美乃ちゃんに声をかけた。

30分後に始まる会議の準備がまだできていないのが気になって、慌てて頼んだけれど、美乃ちゃんから返ってきた答えは

「私がシステム開発に行って来てあげるよ。会議の準備なら、結花の方が慣れてるから効率いいでしょ?」

「え、いいの?助かるけど、届ける相手って、佐々木部長だよ。何かとうるさいから、苦手だって美乃ちゃん言ってなかったっけ」

「え、佐々木部長?苦手だなあ。……ま、いざとなったら、駆に助けてもらおう。うん、そうしよう」

美乃ちゃんの口から飛び出した『駆』に、何だかひっかかった。

きっと、園田くんの事だ。システム開発の同期、園田駆くん。

この間、彼が秘書課に高橋専務のスケジュールを聞きに来た時も仲が良かったのを思い出した。

「園田くんと、最近仲がいいんだね」

ふと思って、軽く聞いてみると、美乃ちゃんは何故かはっとしたように顔色を変えて

「そ、そんな事ないよ。結花だって、かけ……園田くんと仲いいでしょ?
一緒だよ」

慌てる様子が、やっぱり不自然だ。

首を傾げている私から逃げるように、

「じゃ、システムに行ってくるねー」

ばたばたと駆けて行った。

やっぱり変なんだけど。もしかして?まさか?

「……」

ふうっと息を吐いて気持ちを落ち着かせる。

自分に都合のいい考えは止めたでしょ?諦めたんでしょ?

何度も自分にそう言い聞かせた。