「俺の誕生日ももうすぐなんだけど」
バラに触れる指先はそのままに、利也さんは小さく呟いた。
身動きもとれず、見えない鎖で固定されてるように利也さんに支配されている感覚の中、瞳だけで頷いた。
来週の土曜日が、利也さんの誕生日だ。
そんなの、とっくに知っている。
すっと離れた指先。
瞬間、ぐっと温度が下がった気がして体が震えた。
利也さんに触れられていた耳元だけが、何だか熱い。
椅子の背に回された腕を感じて、何だかほっとした。その近い距離が、今だけのものだとしても、やっぱり嬉しい。
大好きな人の体温を感じる事が、こんなに幸せな事だと、好きになってはいけない人から教えられる。
「その日、楽しみなんだよね」
私の瞳をしっかりと見つめて、利也さんは頷いた。
その日、利也さんの誕生日に何があるんだろう。
「27歳に、なるんですよね」
「そうだよ。知ってたんだ」
「あ……美乃ちゃんが、そう言ってたような気がして……」

