甘恋集め


利也さんが連れて行ってくれたお店は、こじんまりとした和食のお店で、カウンター席が10席と、テーブル席が12席。

開店後、最初のお客さんが帰る頃と重なったせいかカウンター席が空いていた。

「並ぶつもりでいたけど、ラッキーといえばラッキーか」

利也さんはくくっと笑って呟くと、隣で緊張している私の前にお品書きを広げてくれた。

その言葉の意味がわからなくて首をかしげると、

「結花ちゃんと一緒に並んで待つのも楽しいかと思ったんだけどね」

「え……?」

「まあ、こうしてカウンター席に肩寄せ合って座るのもいいけどね」

さらっとそう言う利也さん。

いつもと違う様子に、どう答えていいのかわからなくて、固まってしまう。

混み合う店内のカウンター席。それも一番端の、壁際の席に座る私に体ごと寄せてくる利也さん。

必要以上に近いと思うのは、気のせいなのかな。

男の人と二人で食事なんて滅多にしないから、必要以上に緊張しているだけなのかな……。

でも、私の椅子の背に手を置いて、まるで私の体を囲むようにお品書きを見るなんて、やっぱり近すぎるよ……。

ドキドキしてうまく息ができない。