甘恋集め

ここ数日の慌ただしさと、私の中に埋もれていた記憶がよみがえってきたことに甘えていたのか、ずっと忘れていた。

忘れていたのか、思い出さないようにしていたのか、はっきりしないけれど、やっぱり思い出さないようにしていたに違いない。

隣で私を見守ってくれる竜の体温を直接感じて、その仕草や愛情の揺らぎを感じられるのに、どうしても逃れられない未来に私は縛られている。

『大学卒業と同時に結婚する』

それが、資金繰りに困った両親への経済的な援助の条件だったから、私にはもうそれを拒否する資格はない。

どうにか持ち直した両親が経営する工場の事を思うと、私が結婚するくらい平気だと思っていた。

相手の事は何も知らないままだったけど、結婚してからお互いに愛し合えるかもしれないと、そんな奇跡すら願いながら受け入れていたのに。
一生この人以外愛せないと思える人が隣にいて、私を愛してくれているのに。

「竜……私ね、もうすぐ、けっ」

「結婚するんだろう?知ってる」

『結婚する』と、泣きそうな気持ちで伝えようとした言葉にかぶせるように、竜が口を開いた。

「だって、それ俺との結婚だぞ」

……は?