竜は、小さく息を吐くと、視線を緑色の屋根に向けた。
「いつか、緑色の屋根の家に住みたいって言ってた梅の為に、実家の屋根を塗りなおした。二人の思い出のこの場所からそれを見てるうちに、記憶も戻るんじゃないかと期待してた」
「え?塗りなおしたの?……そういえば、前は茶色の屋根だったような」
まだおぼつかない記憶をたどると、確かに竜の実家の屋根は茶色だったような気がする。
ベージュの外壁に調和した、落ち着くイメージの家だったはず。
「わざわざ……塗りなおしたの?」
驚きでいっぱいになった私は、ぼんやりとそう呟いた。
竜は、まっすぐ前を見たまま私を見る事なく頷くと
「俺らが恋人同士になったこの場所に頻繁に来るって、楓に聞いて、賭けてたんだ。
俺の事を忘れても、潜在意識の中にちゃんと俺が残っていていつか思い出すって。
そのきっかけになるように、緑色の屋根に塗り替えた。
……必死だったんだ」
ぐっと結ばれた口元が、苦しげに見えて、私の心も痛くてたまらない。
竜が苦しみの中で過ごしてきた時間を思うと、私も苦しい。
『必死』だという竜の思いに、ひたすら申し訳なくなる。
「いつか、緑色の屋根の家に住みたいって言ってた梅の為に、実家の屋根を塗りなおした。二人の思い出のこの場所からそれを見てるうちに、記憶も戻るんじゃないかと期待してた」
「え?塗りなおしたの?……そういえば、前は茶色の屋根だったような」
まだおぼつかない記憶をたどると、確かに竜の実家の屋根は茶色だったような気がする。
ベージュの外壁に調和した、落ち着くイメージの家だったはず。
「わざわざ……塗りなおしたの?」
驚きでいっぱいになった私は、ぼんやりとそう呟いた。
竜は、まっすぐ前を見たまま私を見る事なく頷くと
「俺らが恋人同士になったこの場所に頻繁に来るって、楓に聞いて、賭けてたんだ。
俺の事を忘れても、潜在意識の中にちゃんと俺が残っていていつか思い出すって。
そのきっかけになるように、緑色の屋根に塗り替えた。
……必死だったんだ」
ぐっと結ばれた口元が、苦しげに見えて、私の心も痛くてたまらない。
竜が苦しみの中で過ごしてきた時間を思うと、私も苦しい。
『必死』だという竜の思いに、ひたすら申し訳なくなる。

