その日の夕方には病院を退院した。 とりたてて体に変調があったわけでもなく、引っ越すはずだった家を見せられて記憶を取り戻しただけの私に、入院する理由もない。 『また何かあったら心配だから、一晩だけでも入院しろ』 竜がやたらと入院をすすめたけれど、私には病院よりも家に帰りたかった。 そして、竜が運転する車で向かっているのは。 やっぱり。 あのベンチ。 あの日、竜が私に『恋人になる?』 と言ってくれた場所だ。