甘恋集め



「この先何度でも、『透子』って呼んでもらえるといいな」

「うん、ありがとう」

そう呟いた途端に、頬に熱いものが流れた。

笑顔で山崎くんを見ているのに、何も悲しい事なんてないのに。

自分の気持ちに逆らうように、涙は止まらない。

カバンから取り出したハンカチでごしごしと拭って、大きく息を吐いた。

それでもじんわりと浮かんでくる涙を感じて、へへへっと苦笑い。

「今日、ハンカチ3枚もカバンに入ってるから、良かった」

明るくそう言って、歩みを速めた。

既に私達以外の三人はお店に着いている筈。

とっくに席についているのかな。

合流するまでに、この涙をどうにかしなきゃ。

赤くなっているに違いない目をどうしよう。

泣いたってすぐにばれちゃうかな。そうなったら色々と心配かけるかな。

そんな事を考えていると、だんだん歩くスピードも落ちてくる。