甘恋集め

『梅ちゃんが小さな頃、会ったことがあるのよ』

にこやかに笑いながら声をかけてくれたのは、初めて打ち合わせに来てくれた時だった。

著名な建築士だと聞いてはいたけれど、こんなに気さくで話しやすい人とは思わなかった。

そんな嬉しい誤算にほっとした。

長い付き合いの透子さんと両親。私が小さな頃にも会っていたことがあるらしい。

記憶になくて残念だけど、透子さんは

『本当に、きれいな女の子になったのね。うちの竜我のお嫁さんにどうかしら』

ふふふと笑う表情はまだ少女のようで、人を和ませる雰囲気に満ちた人だった。

『双子の有星には大切な女の子がいて幸せそうなのよ。竜我も早く幸せになって欲しいわ』

私も両親も、冗談に違いないその言葉に軽く笑っただけで、気にもとめなかった。

竜我って珍しい名前だな、双子なんだ。

そのくらいの記憶しか残らなかった。

けれど、その時の透子さんの目は決して冗談じゃなかったんだと後で気付いた。