二人でゆっくりと歩きながら、濠との出会いや、心臓の手術の事を話した。
今では元気に過ごしている私が、以前心臓に欠陥があった事を聞いてかなり驚いていたし、濠と離れ離れになった経緯を話した時には、まるで自分の事のようにつらそうにしてくれた山崎くん。
「もう、体は大丈夫なのか?」
「うん。時々検査に行くけど、万事オッケーなんだよ。だから大学の課題だって徹夜でこなしてるし、みんなと旅行に行ったりもしてるでしょ?」
「そうか。良かったな」
ポンポンと私の頭を撫でてくれる仕草。
今まで何度もそうしてくれたけれど、何だかうれしくて泣きそうになる。
「山崎くん……」
ぐすん、と。
私が泣いたらダメなのに。それって卑怯なのに。
山崎くんの気持ちが温かくて、ほっとして、瞳の奥が熱くなる。
「ま、透子ちゃんが会いたいって強く願ってる男、きっとそいつだって透子ちゃんの事、探してるさ。
たった一度しか、『透子』って呼んでないんだろ?」
「うん……」
心臓の発作で、私が倒れる寸前に聞こえた濠の声。
予想よりも掠れていたことしか覚えていない。
でも、私の事を心配して焦っている気持ちは強く伝わった。

