甘恋集め

もともと、それほど強くない気持ちを奮い起こして、必死で頑張っている。

もうすぐ受け入れなきゃいけない現実との折り合いをつけるために、毎日あの屋根を眺めている。

本当なら、将来叶えたい、でもそれは無理だとわかっている夢を諦めるために。

私はあの屋根を眺めながら。

その日へのカウントダウンに耐えている。

「バイト、頑張らなきゃ」

真田くんの運転する車が見えなくなって、ようやく心が落ち着いた。

くるっと体の向きを変えて、お店のドアを開けようとした時、手に持っていた携帯が震えた。

誰だろ。母さんかな。

「もしもし」

画面を見ずに出ると、

『俺、明日の晩には今住んでるマンションに戻るから、明日しかないんだ。都合良かったら連絡して。ちゃんと緑の屋根、見せてやるよ』

「え?」

『あ、信号青に変わるから、とりあえず切るな。じゃ、そういう事で』

「ちょ、ちょっと、もしもし?」