「山崎くん……ごめん……」

ゆっくりとその場に立ち止まって山崎くんを見上げた。
20センチくらい私よりも身長がある山崎くんは、私の言葉に口元をきつく結んだ。
私をじっと見ながら、何も言わないまま、ただつらそうに立っている。

「透子ちゃんが、俺の事を好きじゃないってわかってるけど。
俺にとっては『強く願う』っていうのは透子ちゃんを手に入れるって事なんだ」

さっき、相模さんが言ってた言葉。きっと、誰もが心に残した言葉だ。

私にも大きく響いて、心は震えて、強く欲しいと願えば手にする事ができると信じてしまう言葉だ。

一緒にその言葉を聞いていた山崎くんが、私に向けてその言葉を言ってくれた。

欲しい物は私だと、そう言ってくれた。

「あ、ありがとう……。でも……私にも、強く願う事があって……」

いくら相模さんの言葉が大きな意味を持っていて、誰もが力を得るものだとしても、山崎くんが願う思いをかなえてあげられない。
私が欲しいと、そう言ってくれる気持ち。

ありがたいと思う。
大して魅力もない私を女と見てくれて、嬉しい気持ちは強いけど。

「私も、手に入れたい人がいるの」

正直に、そう答えた。