甘恋集め

その現実を、おじさんはもちろんだけど巧さんも知っているはずなのに。

どうして真里さんは妊娠へ向けた治療を続けるんだろう。

真里さんにとって、心身ともにかなりのダメージもあるはずだし、金銭的なものもばかにできないはず。

少なくとも『跡継ぎ』という枷はないと、おじさんは言っているのに、どうして治療を継続するのか。

そんなに、わが子が欲しいものなんだろうか。

もちろん、自分と血がつながった子供が欲しいと思うのは本能なのかもしれないし当たり前の感情かもしれない。

愛する人と結婚して、愛する人の子供を産みたい。

その思いを叶えられる状況ならば、それはとても幸運な事だけど。

たとえ妊娠する事が難しい状況だとしても、それが幸せ全てを奪うものではないと、言ってはいけないのだろうか。

押し付けの良心は、受け止める側には単なる『余計なお世話』にしかならない場合も多い。

でも、たとえ血がつながってない子供でも、愛情で結ばれた親子関係を築くことは可能だと私は知っている。

私は、両親からの多くの愛情を受けて幸せに生きてきた。

両親から喜怒哀楽すべての感情を落とされて、笑顔も涙も悔しさも与えられて今の私が出来上がっている。

両親が亡くなった今でも、二人が作り上げた私は幸せで、両親が愛してくれた事と私が両親を愛していた事は確かな事。

両親と私に血のつながりはないのに。そんな事実を超えて、私たちは幸せに生きていたし、私は今も幸せだ。