甘恋集め

真里さんの涙を指先で拭う巧さんの表情は寂しげだ。

きっと、真里さんの気持ちを何度も聞いていたんだろうと思えるくらいに落ち着いている。

夫婦だもん、子供の事や会社の事、二人で一緒に悩んでいたんだろうな。

なんのためらいもなく巧さんに体を寄せている真里さんからは、愛する人から愛されているのがすぐにわかる安心感が漂っている。

涙を流しているし、彼女の悩みの大きさはかなりのものだけれど。

目の前の愛し合う夫婦の姿を見せられて、羨ましくなる。

ふと、隣の駆を見ると、彼の視線は巧さんと真里さんに向けられていて、その瞳には羨望がありありと浮かんでいる。

私と同じ気持ちかな。

きっと、目の前の二人の様子がうらやましいんだろう。

「姉さんがどれくらい悩んでいるのかよくわからないけど、見当違いな悩みだと思う」

その場の止まってしまった雰囲気を崩すように、それまで黙っていた利也くんが口を開いた。

みんなの視線が一気に利也くんに向けられて、その瞬間利也くんは苦笑する。

「おじさんが、俺と美乃を結婚させて、美乃を身内にしたいっていうのはそのまま当たってると思う。おじさんは、美乃が大好きで大好きでたまらないからな。
手元に置いて、娘としてかわいがりたくて仕方ないんだ」

くすくす笑いながらの言葉に、おじさんを見ると、照れくさそうに俯いていて、耳は真っ赤だ。

そんなに私の事を大切に思ってくれてたんだ、と嬉しくなる。