甘恋集め



「美乃ちゃん、ごめんね。私がなかなか妊娠できないから、お義父さんは跡継ぎを気にして利也と美乃ちゃんの子供をって……。
二人ともお義父さんとお義母さんのお気に入りだから、ちょうどいいって考えたんだと思うの」

巧さんに抱き寄せられたまま、か細い声で私に頭を下げる真里さんに、この場にいる面々は視線を寄せたまま。

震えている真里さんの言葉を理解する事は、私にはなかなか難しい。

巧さんと真里さん夫婦が子供を欲しがっていることすら知らなかった。

何度かこの家に呼ばれて、食事を一緒にしたり、私の誕生日や就職のお祝い。

人生の区切りを祝ってくれるたびに顔を合わせていたけれど、そんなこと全く気付かなかった。

真里さんは、子供が欲しかったんだ。

子供というよりも、おじさんが求めている『KH建設』の後継者を産まなければ、と思っているのかもしれない。

両親を亡くした私にいつも優しい気遣いと、ほどよい距離感の関係を保ちながら見守ってくれていた真里さん。

彼女の頬を伝う涙の理由を知らなかった自分が情けなくなる。

「お義父さんは、美乃ちゃんが本当の娘ならいいのにってよく言っていて、それならいっそ、身内である利也と結婚させれば自動的に美乃ちゃんも身内になるから。だから、利也との結婚をすすめてたのよ」

誰を責めるというわけではない、ゆっくりとした口調に、さらに真里さんの悲しい気持ちがのせられているように感じた。