甘恋集め

そっと、駆の手の上に私の手を添わせた。

触れるような弱い力で握るだけなのに、それでも私の手に伝わる震え。

それが切なくて胸も痛い。

駆のせいじゃないのに、どうしようもないのに、その事を悩まないで欲しい。
と思っても、それは本人にしか解決できない心の闇。

駆が小さな頃から背負ってきた現実だ。

「子供の頃の高熱のせいで、子供を持てる未来は閉ざされていることが、結婚を反対される理由でしょうか?」

瞳をまっすぐに向けたまま、一語一語はっきりと問う横顔は初めて見るかもしれない駆の新たな顔。

感情をぐっと抑えながら、何かを耐えているその様子に、この場にそぐわないときめきすら感じる私っておかしいかもしれない。

きっと現在進行形で悩んでいるに違いない心を語っている今でさえ、その駆に対してふんわりとした甘い思いを抱いてしまうなんて、私、本当に駆に惚れてるなあって、ただそれだけを実感して。

駆がおじさんと対峙していることすら軽くとらえてしまう。

……だって、駆の体の事情なんて、とっくに受け入れて納得して。

それでも私は駆と結婚しようと決めたんだし。

今更そのことでおじさんが何を言っても、私の気持ちは変わらない。

その変わらないって事実さえ私が持っていれば、いいんだ。

まあ、駆にしてみれば、おじさんにも納得してもらいたいだろうけど。

そのことを、駆のご両親が一番気にしてたのも事実だし。

なんといっても駆の勤務する会社の社長でもあるから。