甘恋集め

そして、現実と向き合う事となる。

何度も来た事がある高橋のおじさんの家の広い広いリビングには、重苦しい空気がたちこめていて、呼吸するのでさえ気をつかう。

向かい合わせのソファに座って、高橋のおじさんはじっと私を見ている。

会社で見る社長としてのスーツ姿よりも、今こうして目の前にいるラフな姿のおじさんの方が見慣れていて、少し気持ちは楽になった。

おじさんの隣でにやにやと笑っているおばさんも、いつも身に着けているドレスエプロン姿。

その様子は、私に『大丈夫よ、普段通りにね』と励ましてくれているようで、嬉しくなった。

そして、少し離れたテーブル席について、ちらりちらりとこちらを見ている、というか、不安そうに見守っているのは、高橋家の長男であり、『KH建設』専務である功さん。そして、奥さんの真里さん。

利也くんのお姉さんの真里さんは、心配そうに利也くんに視線を投げている。

功さんは、私にとっては幼馴染でありお兄ちゃんのような存在でもあるけれど、次期社長という立場上、駆くんにとってはかなり緊張する相手。

その相手からの慣れない視線に、きっと戸惑ってるはずだと思って隣の彼を見上げると。

意外。

なんの緊張感も浮かべず、さっぱりとした表情でおじさんと視線を合わせてる。

口元には穏やかな笑みまで見えているし、まっすぐに伸びた背からは固い決意も見える。

私に対する思いがぶれたと感じたことはないけれど、こうして今見せられるその姿からは、今までとは比べ物にならないほどのまっすぐな芯を感じて震えてしまう。

本当に大好きだよ、駆くん。

あまりにも格好よく見える駆くんを、心で励まして、小さく頷いた。