僕は明け方前から親友であり愛しい幼馴染みの家の扉前で待機していた

もちろん僕だって好きでこんなストーカー紛いのことしている訳じゃない

今日のこの日にリッツがこの国を去ってしまうからだ
彼が目の前から去ってしまうなんてそんなことは絶対許せない!

初めて出会ったあの時のことは今でもつい先ほどの事のように目に浮かぶ。宮殿の春薔薇庭に座り込んでいるリッツに声を掛けて振り返った瞬間にーーーー恋に落ちたんだ。

陽の光をたくさん浴びて輝く極上の銀糸の髪に最高級のアメジストも負けてしまいそうな紫の瞳

噂には聞いていた、ジェスルト侯爵の子息は大層美しく魔法の才も素晴らしいらしい、と

噂には続きがあり美しい彼を女性と思い込み求婚した多くの貴族は彼の逆鱗に触れ、こっぴどくフラれボコボコにされたがいまだに諦め切れず彼のファンとして崇拝している

ただのファンになるつもりはないが、その貴族たちの気持ちは分かる。

我らシェラール国は竜族の国、一度惚れた相手を生涯大切に守り愛しぬく習性がある

僕も例外にもれず、この国から旅立つ愛しいリッツを守るために今扉の前で待機している