忘れるわけがない。
「嫌い。あんたなんか大っ嫌い!」
あんなにボロボロと涙を流して、俺に叫んだじゃないか。
この前だって、俺の手に反応して身を引いただろ。
「怒れよ」
俺は目を細めて、もう一度、頭を下げる。
「怒ってくれよ」
簡単に許すなよ。
負った傷は、そんなに軽くないだろ。
「もういいって」
何度も願う俺に、彼女はうんざりした声で打ち切る。