彼女の足が、ゆっくり俺の方を向く。
俺は口内にたまったつばを飲み、目をギュッと閉じた。
「もう忘れた」
頭上でささやかれた言葉。
俺のまぶたは、自然と開いてしまった。
「そんな昔のこと、もう忘れたよ」
恐る恐る顔を上げると、彼女はツンとした表情でそう言った。
胸が潰れるくらいの痛みが、俺を襲う。
それは、三浦に殴られたときよりも痛い返事。