シーンと静まり返った車内。
ドアの隙間から、外の風が入り込んでくる。
俺はつばも飲み込めないほどに、息苦しい気持ちでいた。
車軸の関節部分が音を出し、少しだけ横に揺れる。
過去の話を持ち出したことで、俺と坂下は重たい空気に包まれていた。
彼女は黙ったまま、遠くを眺めている。
「ごめん」
俺はもう一度、謝った。
許すという言葉がほしかったわけじゃない。
ただ、何度言っても言い足りないくらいに俺のした事は最低だったから、返事ができない彼女に頭を下げることしかできなかった。