ひまわり(第2章まで公開)

「好きな子とかもいねぇの?」
寝転びながら携帯をいじる俺に、悟はまだ旅行の話をしてくる。
その質問を耳にしたとき、俺の脳裏にある女の顔が浮かんだ。
「いねぇよ」
感づかれないように、平然とした態度で答える俺。
口を尖らせる悟は、昼休みの終わりを知らせるチャイムに反応して、それ以上は誘ってこなかった。
午後の授業を受けている間、俺は坂下のことを考えていた。
彼女とは、あれ以来、会っていない。
俺は、あの飲食店に近づくことさえしていなかった。
それは、自分の立場を忘れてはいけないからだ。