ひまわり(第2章まで公開)

「あ、そうだった! サンキューな! すっげぇ人がいっぱいだったけど、面白かった!」
続けて、悟も思い出したかのように、口の周りに生クリームをつけたまま礼を言う。
俺があげたのは、親の会社が関係している遊園地のタダ券。
親から数枚のペアチケットをもらっていた俺は、ちょうど行きたがっていた2人にプレゼントをしていた。
「健二くんはもう行ったの?」
「いや、行ってないよ」
広美ちゃんの問いかけに、俺は首を横に振る。
オープンしたばかりの遊園地なんて人がウジャウジャしているだけで、乗り物にたどり着くには何時間も待たなければならない。
そんな場所に女を連れて行っても面倒くさいだけだから、俺はチケットを1枚も使っていなかった。
行かない理由は他にもあるから、夏の間は行くことも無いだろう。
「そうなんだぁ。かわった乗り物もたくさんあったし、ひまわりがいっぱい咲いてて綺麗だったよ!」
広美ちゃんはテーブルの上で両手を合わせて、身を乗り出してくる。
「広美のほうが綺麗だよ」と、彼女をからかう悟。
2人はいつものように、仲よさげにじゃれあい始めた。