ひまわり(第2章まで公開)

「…いや、俺と違って健二は成績も良いほうだし、羨ましいなって思って」
少し間を置いて、悟はケラケラと笑い出す。
俺は側にある紙パックのコーヒーを一口飲んで、もう一度、寝そべった。
2年の頃から、進路を考えるようにはなったけれど、正直、俺にとってはどうでもいい話だ。
俺がどんな道を歩んでも、どうせ親たちは何も言ってこない。
興味があるのは、いつだって兄貴のことだけ。
兄貴が大学を決めるときは、毎日のようにリビングで話し合いまでしていたけれど、俺のことで家族会議みたいになったことは一度もない。
だから、いつも進路希望の用紙には、無難なところを記入していた。
「あ、そうそう!夏休みさぁ、旅行とか一緒に行こうぜ」
胡坐をかいて、サンドイッチを食べる悟が、話題を変える。
「2人で?」
「いや、広美と3人で」
てっきり男同士で行くのかと思いきや、悟はちゃっかりと自分の彼女の名前も付け足していく。