「またそんなもの食べてるの? すぐお腹を壊すくせに」
会話をしながら喫茶店でくつろいでいると、他校に通う悟の彼女が現れた。
「これくらいで壊さねぇよ。てか、生クリームばっかだし」
隣の椅子に腰掛けた彼女に、悟はまたもや愚痴を漏らしていく。
河野広美、俺らと同い年の女の子。
悟とは幼なじみで、2人は高1の冬から付き合っている。
恋愛経験が少ないせいか、俺の周りにいる女たちと比べれば幼く見えるけれど、悟と一緒にいるときはなぜか大人っぽい。
少し染めたこげ茶色の細い髪の毛に、芯の強さを主張するかのような大きな瞳。
はっきり言って好みのタイプではないけれど、俺はこの子に恋をしたことがある。
そのときは悟とも喧嘩をしたし、彼女に対して真剣に想いを告げたりもした。
「健二くん、遊園地のチケットありがとう。この前の日曜日に、2人で行ってきたよ。すごい楽しかったぁ!」
店員にアイスレモンティーを注文した後、広美ちゃんは俺に向かって話しかけてきた。