ひまわり(第2章まで公開)

昼間の蒸し暑さが、夜風に流されていく。
虫の声が耳障りなほどに響く道を、俺と広美ちゃんはゆっくりと歩いていた。
「最近、適当なの」
店を出てからしばらくの間、黙りこんだまま歩いていた彼女がポツリとつぶやく。
「…何が?」
今日の悟を見ていて、そうは感じなかった俺。
彼女の言っていることの意味が、少しわからなかった。
「サトが」
ムスッとした顔で、彼女は答える。
だけど、悟のどこが適当なのかが見えない俺は、点々と立ち並ぶ電灯を眺めながら、数秒、考えていた。
「…そうでもないんじゃない?」
さっきもそうだけど、毎月、悟は広美ちゃんのために料理を作っている。
俺は女のために何かをしたことなんて、一度も無い。
見ている限り、悟は広美ちゃんのことを大事にしていると思うんだ。
だけど、彼女はしかめっ面で、不満を抱えている。