ひまわり(第2章まで公開)

あの2人とばったり出くわしたことで、俺は女の家へ行く気にもなれず、ユリを家まで送り、数十分後には自宅の前にいた。
疲れきった面持ちで、俺は鞄の中のキーケースを探している。
鍵を開けて玄関のドアを引くと、同時に賑やかな声がリビングの方から聞こえてきた。
親の笑い声を耳にするのは、久々だった。
誰か来ているのかと思い、玄関に並べてある靴に目を向けた俺は、状況を把握してため息をつく。
「おー、健二!おかえり!」
親が明るいのは、4年前に結婚して家を出た兄貴が、家族を連れてきていたからだった。
リビングには顔を出さずに、自分の部屋へ向かっていた俺は、階段のところで兄貴に声をかけられる。
「…ただいま」
振り返ることなく、素っ気ない返事をして、俺はそのまま2階へ上がった。