ひまわり(第2章まで公開)

下を向いていた坂下は、チラッと俺の顔を見上げ、気まずそうにしながらも、ゆっくりと口元を和らげてくれた。
ニヤニヤ笑っているおじさんの目が嫌で、俺は坂下を連れて売店から離れる。
「あのさ、俺も一個だけ……言っていい?」
部屋に戻る途中、思い切ってあの話をしようかな、と思った俺は勇気を出して立ち止まる。
階段を上りながら振り返る坂下は、首を傾げて、俺の言葉を待っている。
「下の名前で呼び合わない?」
さっきの話の中で、坂下は悟のことを下の名前で呼んでいた。
地味にそのときの俺は、悟にむかついていたわけで、どうしても健二って呼ばれたいと思ってしまったんだ。