「わぁ!! 写真どおりの部屋だぁ」
海より少し離れた場所にある、小さな旅館。
2部屋とっていた俺たちは、その1室に全員で入り、部屋のあちこちを見渡してした。
「夜は蛍も見れる、って雑誌に載ってたよ」
ベランダに出て外の景色を見る広美ちゃんが、嬉しそうに振り返る。
立ち並ぶ旅館で少し隠れてはいるけれど、隙間からわずかに浜辺も見えていて、後で泳ぎに行きたいなと思った。
「やっぱ、広美ちゃんが選んだとこで正解だったな。お前が行きたがってたとこよりは、全然いい」
隣にいる悟に、俺は笑顔で話しかけた。
大型テーマパークの中にある城に泊まりたいとか、めっちゃくちゃ遠い場所ばかり選んでいた悟は、その言葉を聞いてブスッとした表情をする。