「待てって!最後まで話を聞けよ!」
出てくるなり、その男は急いで坂下の腕を掴む。
そして、ゆっくりと視線をずらし、側にいる俺を見上げた。
「…豊川」
びっくりした表情で俺の苗字をつぶやいたのは、中学時代、仲が良かった友人だった。
そう、俺が裏切った相手、三浦昌平。
そして、俺にぶつかり、三浦に引き止められている彼女は、坂下愛子。
俺にひまわりの花言葉を教えてくれた女だった。
人で溢れかえる夜の街で、凍りついた3人の表情。
忘れることの出来ない相手との突然の再会で、俺の頭の中は真っ白になっていく。