俺は眉間にしわを寄せて、突っ込んできた女を見下ろした。
「大丈夫?…ちょっと、気をつけなよ!どこ見てんのよ!」
側にいたユリは俺の心配をしながら、その女に文句を言い始める。
そのときだ。
「すみません!」
ぶつけた顔を手のひらで覆っていた女は、腕を下ろして急いで頭を下げていく。
俺は目を大きく見開いた。
心臓が止まってしまうかのような衝撃が、体全体を走っていく。
「坂下…?」
思わず、声が漏れた。
胸の鼓動はドクンドクンと波を打つ。
思ったとおり、顔を上げた彼女は、俺を見て驚いている。
「何、知り合い?」
そう言って、ユリが俺の顔を覗き込んだとき、彼女が出てきた店から見覚えのある男が飛び出してきた。